Update Info

最終更新日:2019年10月28日

2019年10月28日

トランスジェンダーを考える:前編

「まひるがまひるのままでいられないなら、それは世界中の人間が間違ってる」
(「ねがぽじファンディスク」より)

近年は性的マイノリティの人々の存在が注目されるようになり、ひと昔前と比べればかなり認知されてきたように思います。(必ずしもいい面ばかりではないですが。)そういう題材の娯楽作品も増えました。性的マイノリティとはいってもその内訳は様々ですが、今回取り上げる「トランスジェンダー」もそのひとつです。(「同性愛」は性指向による区分でまた別物です。)オタクコンテンツでも、いわゆる「男の娘」(これはどちらかというと「女装男子」の意味合いが強い気がします)が流行りのひとつとなっていますが、現実の当事者が抱える葛藤や差別まで言及した作品はあまりありませんでした。そんな中、私がプレイした昔のゲームで印象的だった作品を紹介したいと思います。

※近年ではトランスジェンダーという名称の解釈も拡大されてきていて、見た目男性・性自認が男性で女装だけしている人もトランスジェンダーに含まれるという見方もありますが、ここではトランスジェンダーを狭義のトランスセクシャル(心と体の性別が一致しておらず、身体違和がある人。医学用語では性同一性障害)と同じとさせてください。生来属性と嗜好は違うものなので、私個人はこれらは違う区分になると考えます。

仏蘭西少女:我思う、故に我あり

※ストーリーの最後までネタバレあるのでご注意ください。

このブログで取り上げる題材として、私個人の大本命のひとつが「仏蘭西少女(ふらんすしょうじょ)」(2009年PIL)です。(例によって製品ページがもう存在しないので、Internet Archive経由のリンクです。)

原画がTony氏、シナリオの丸谷秀人氏の力の入った文章、純粋な内容の質という点では十分な良作に値すると私は思います。にも関わらず、実はこのゲーム、かつて2ちゃんねるのクソゲーオブザイヤーに入っていたのですが、私はさもありなんと考えます。なぜなら、この作品は多くの男性プレイヤー、とりわけ先の記事で取り上げた「立場の弱い女の子を支配下に置く」ことを求める人にとっては、絶対的に面白くない要素を含んでいるからです。男性向け18禁ゲームにも関わらず、このゲームはむしろフェミニズム的視点から論じられるべき面が大きい作品ではないかと、私は感じています。

2017年1月15日

ペルソナ5:あえてジェンダー論的観点から

※この文章は私の時事問題用Twitterアカウント(moo40s)での発言をまとめて、追加修正したものです。

2016年9月に発売されたセガ/アトラスの待望の新作「ペルソナ5」(PS3/PS4)は、全体的にすごい風刺を散りばめた、ボリューム的にも内容的にも大満足な作品でした。あまりに風刺が鋭くて、無邪気に楽しめない感もあるのですが、よくぞ今の時勢にこの作品を出してくれたと感服します。この作品の一般的なレビューは、以下を見ていただければよろしいかと。私もおおむね同意です。

IGN Japan:ペルソナ5 Review

普通のレビューは他にもたくさんあると思うので、この記事ではあえてあまり着目する人がいないであろう、ジェンダー論的観点からの指摘をしたいと思います。

人間には選択肢がある

前の記事で取り上げたTwitter上の案件で問題にされた、「自分より弱い立場の女性を支配下に置くこと」は、男性向けアダルトゲームの場合、むしろ定番モチーフのひとつと言っていいと思います。笑えないのは現実にも似たような事件が起こっていることで、こうしたゲームを楽しむには、まずそのような行為が実際には重大な人権侵害で、犯罪であることを理解していることが必要になります。

2016年11月20日

不可思議で究極の理想像

いろいろな嗜好が存在するゲーム界において、「メイドさん」はもっともポピュラーかつ不可思議な属性のひとつといえましょう。看護婦さんや巫女さんは現代日本にも存在しますが、メイドさんは日本ではまず庶民には馴染みがありません。日本で古来よりメイドと同じ仕事をしてきたのはいわゆる女中、仲居というような人々で、現代においては家政婦さんがその役割を担っていますね。しかし、それらと「メイドさん」は完全な別物です。このような限られた属性が頻繁にゲームに登場し、好まれているのは、興味のない人から見るとかなり謎かもしれません。